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2007年11月 に書いたもの

2007年11月07日

「宝塚映画祭」映像コンクール
「ブルーカラーウーマン」レポート第一部

「宝塚映画祭・映像コンクール」レポート
第一部

07年11月3日土曜日。
文化の日。
宝塚映画祭の映像コンクールが開催されました。

今年で8回目となる宝塚映画祭は、
宝塚市を中心に数日間に渡って
様々な映画上映、トークショー、イベントなどが行われる
映画の祭典です。
宝塚歌劇とはまた別のものでございます。

かつて撮影所のあった宝塚で、
今一度、映画を復興しようではないかと、
毎年開催されています。

そのイベントの一つとして「映像コンクール」があります。
いわゆる自主映画を公募し、審査し、上映、表彰しようというもの。

約100本の応募作の中から、わたくし吉田の撮りました
「ブルーカラーウーマン」という45分の中編が入選しまして、
この度、宝塚まで行って参りました。

入選作は8作品、もう一つアニメ部門に4作品。
これを午前中から夕方まで一挙に上映。
入場は無料で、
小さな会場でしたが、お客さんの絶えることがなく、
立ち見の回もあったほどですから、
まずまず盛り上がっていたと言えるのではないでしょうか。
いえ、まあ、小さな会場ではあったのですが。

他の入選者の方々の作品も是非拝見したいと思い、
前日から京都に住む高校時代からの友人(音楽をやっています)宅へお泊りし、
当日は7時に起床して会場へと向かいました。

9時半。友人と二人、宝塚南口駅に降り立ちました。
駅ではタカラジェンヌと思しきカッコいい女性を二人見かけました。
金髪(茶髪?)で背が高く、ジーンズで、背筋をシャンと伸ばして闊歩していました。
素敵な街だなあ、と友人と二人で感心してしまいました。
仮に彼女がタカラジェンヌではなかったとしても、
それに類する人がチラホラ目に入ってくるのは、
気分の悪いことではありません。
歩く姿が格好いいのです。

駅からすぐのところに
会場となる市立国際文化センターはありました。
階段を上るとおばちゃんたちがワイワイいます。
どうやら絵画教室の展覧会が催されている様子。
絵画展覧会が二件開催中の先に、
今回の上映会場となるホールがありました。

まだ時間があったので、
トイレへ行って、外へ出て一服し、雑談。
気付けば上映開始時間が過ぎてしまっていました。
急いで受付を済ませ、入選者の名札を貰い(名札に名前と作品タイトルを自分で記入)
会場入りしました。
すぐ遅刻をする人種の悪い癖だと思います。
反省しました。

一本目の上映は藤岡佳司監督の「理想の朝」。
雑誌「ビッグイシュー」を売るおじさん達にインタビューしたドキュメンタリーで、
僕には大変興味のある題材でもあり、
最後まで釘付けになりました。
おじさん達の言葉があまりにもフィクショナルに聞こえ、
胸に響きました。
フィクションからは最も遠いところにいるはずの彼らの日々の生活。
だからこそでしょうか、
彼らの顔や声、発する言葉の出来過ぎな印象が
グッとくるのです。
何しろ本物です。その人生にウソやごまかしはありません。
学生さんの撮られたドキュメンタリーでしたが、次回作が気になります。

お昼を過ぎて、僕の家族がやって来ました。
このブログでも幾度か登場した僕の母と兄弟です。
福岡からわざわざ宝塚までやって来たのですが、
それぞれに思惑があったようです。
姉はちょうど、旦那さんが出張で兵庫に入っており、
それにかこつけて娘二人を連れての小旅行。
母は、「孫、命!」ですから、
仕事を休んで姉の娘の相手を買って出たわけです。
兄は「連休を取って京都競馬場に行くつもりやった」らしく、
ついでに弟の映画を観に来たのです。
母と兄と姉と姉の夫とその娘二人が、
会場ロビーに陣取っているのを見て、
僕ももういい歳ですが、さすがに顔が赤くなってしまいました。
いかに他人のフリができるかが
今回の映画祭参加最大の目標となったのです。

今回からアニメ部門が新設されており、
これが僕の楽しみでもありました。
個人制作のアニメがどんなことまでできるのか
観たかったのです。
4作品ありましたが、どれも大変な力作でした。
16ミリフィルムで撮影された手描きアニメ、
中村武監督の「矢印」。
フィルムの質感というのは、やはり「映画」の醍醐味の一つです。
スクリーンにパッと映った瞬間、圧倒的に趣がありました。
手描きアニメと呼ぶのか分かりませんが、
セル画ではなく、紙に何枚も同じ絵を描いてのアニメーションの
労力たるや半端ではありません。
僕も以前5分ほどのアニメを
100円ショップで買ったらくがき帳に1000枚ほど描いて作ったことがありますが、
もう二度と作りたくないと思いました。
アニメは、人やモノが動く瞬間に気持ち良さがあるのだと思います。
心地よい線の流動が堪能できた2分の短編でした。

上甲トモヨシ監督の「雲の人 雨の人」は、
とても自主制作とは思えぬ出来栄えでした。
残念ながら監督さんが会場にはお越しになっていなかったため
お話しできませんでしたが、
一体どうやってあれを描いたのか、
大変興味があります。
雲と雨を擬人化した二人の対決が柔らかい動きで描かれます。
カメラワークも自由自在で、グーッと寄ったり引いたり。
個人制作にしては、あまりにも技術が高いと思いました。

自主で活動している僕ではありますが、
あまり自主映画というのを見る機会がなく、
今回は他の入選者の方々の作品を拝見し、
大いに勉強をさせていただきました。


第一部 完

次回へ続きます…。

2007年11月09日

「宝塚映画祭」映像コンクール
「ブルーカラーウーマン」レポート第二部

「宝塚映画祭・映像コンクール」レポート
第二部

07年11月3日土曜日、文化の日。

第8回宝塚映画祭の映像コンクールで、入選した監督たちにはお昼ご飯が用意されていました。
控え室には山積みになったお弁当。
お赤飯と煮物のお弁当でした。
それを黙々といただき、
さして監督同士の会話もないまま(僕も含め皆さん照れてました)午後の上映へと進みました。


アニメ部門、倉田愛実監督の「シェルター」という短編がまたよくできていまして。
ホームページをお持ちのようですので、ちょっと覗いて見て下さい。
どうやって描いたものなのか、これも監督に質問しそびれました。
機械仕掛けの町の様子が次々にクローズアップされます。
東欧アニメ的な画風といいますか、グロテスクな表現もあっさりとこなす辺り
相当な手練れと感得できます。
スパースパーと牛が輪切りになるのがやけに心地よかったです。


実写の部門、夏目大一朗監督の「カミ頼みだ」では、上映トラブルが発生しました。
10分の短編でしたが7分経過した頃に映写が中断してしまいました。
パッとスクリーンが暗くなったのです。
再開したのは良かったのですが、また最初からの上映。

この作品は、自殺しようと試みる夫婦のバカバカしい騒動を描いたコメディで、
本当は、こういった作品をすぐにリフレインするのはよくありません。
さっき見たバカバカしいことを、またバカバカしくやっているわけですから。
しかし、半分過ぎた辺りから、それが返っておかしくなってきたりもしました。
またしても同じことをやっているのが、それはそれで馬鹿臭く思えて。
演技がこってりと過剰なところが、作品に馴染んでいました。

この映画際に場違いな雰囲気の、
ちょいと垢抜けたお姉さんが一人監督席に座っていたのですが、
夏目監督の代理の方だったようで。
上映後の挨拶の様子からして
きっと、楽しい映画制作チームがあるんだろうなーと、羨ましく思いました。
もちろん、そのお姉さんにも話しかけることはできませんでした。


清水雅人監督の「箱」です。最も完成度が高かったのは。
他の作品から群を抜いてよくできていました。
言うなれば、高校野球にプロ野球選手が混じっているような感じでした。

30代OLの恋を描いた55分の力作。
移動撮影、クレーン撮影等の技術面もさることながら、
かっちょいい車や、ロケ地の豊富さ、出演陣の確かな演技まで、
素晴らしい見映えでした。

若い男に揺れ動く主人公の感情、それに対比した妹の存在、
箱をめぐるサスペンス、天使然としたお婆ちゃんの起こす奇跡。
主人公のOLの不倫を中心に、夫婦や家族の様子を丁寧に描いてありました。

結果から申しますと、「箱」は賞を獲得できませんでした。
プロ野球選手だと分かった時点で、
観る側の基準がグーンと上がってしまったからではないかと思います。
僕の推測でしかありませんが、
結果的に「敢えて、賞をあげない」ことになってしまったのではないでしょうか。
ちょっぴり腑に落ちない思いを拭えません。

映像コンクール後の懇親会で、清水監督が話しかけて下さいまして、
名刺をいただいたまでは良かったのですが、
僕も名刺をと、鞄まで取りに行き、
(名刺といっても株式会社オケピの名刺なのですが、一応アドレスなども記載されてますし)
で、戻って来た時には清水監督は他の方々とお喋りされてて、
結局、名刺を渡せずじまい。
サッとポケットに入れて、なんでもないフリをしつつ
ジュースを飲むのでした。


僕の作品の上映は一番最後でした。
朝からずっと、ほとんど休憩なしでぶっ続けの上映です。
自分の作品の番になって、
恐ろしい睡魔が襲ってきました。
さすがにここで寝てはまずいと思い、必死で最後まで目を開けていました。

後で聞いたところによると、
うちの母親は、「ブルーカラーウーマン」上映中、
完全に眠っていたのだそうです。
こっくりこっくりしまくっていたと。
人のことは言えませんが、
せっかくここまでやって来たのだから、
いい客席の雰囲気を作ってくれれば良かったものを…。

と、上映後に僕に話しかけてきた上品なおばさまがいらっしゃいました。
どこかで見たことがあるような目元。
なんと、おけぴネットの管理人のお母様が、
わざわざ会場までいらして下さっていたのです。
おまけに手土産までいただきまして、
恐縮の上に恐縮を重ねて、頭を下げることしかできませんでした。
本当にありがとうございました。


全ての上映が終わり、
審査員が各賞を決めるために控え室へ入りました。
表彰が済んだら、僕と家族は大阪のホテルへ移動の予定だったのですが、
審査が随分と長引き、待てども待てども表彰式が始まりません。

正直なところの僕の心情はどうだったのでしょうか。
賞を貰うつもりでいる横柄な自分と、
もうここまで来たんだから賞なんてどうでもいい、という開放的な心地の自分と、
両方が胸中にあったような気がします。
結果は結果として、
いずれにしても、また次の作品を撮ろうと、
そんな結論に達していたときに、ようやく各賞が決定したとのアナウンスがありました。

第二部 完 

思いのほか長くなってしまいました。
次回第三部で終わります。


2007年11月

●前に書いた記事は2007年09月です。

●次に書いた記事は2007年12月です。

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