11/11/22 青年座交流プロジェクト「欲望という名の電車」稽古場レポ
2011年11月22日(火)13:00
青年座交流プロジェクト公演
「欲望という名の電車」稽古場レポート
今年、生誕100周年を迎えるアメリカ現代演劇の父・テネシーウィリアムズの代表作
「欲望という名の電車」。
内外の名女優たちが演じてきた大役・ブランチに
青年座の看板女優・高畑淳子さんが挑む注目舞台です。
ジェシカ・タンディ、ビビアン・リー、そして青年座では東恵美子さん、
文学座で杉村春子さん・・と、数々の演技派女優たちが演じてきたブランチ役。
アメリカ南部のニューオリンズを舞台に、
没落農園の娘が過去の栄光と現在のみじめな境遇、
男たちから受ける辱め、プライド・・様々なものに挟まれて精神の均衡を失っていく様子、
かつての美しさと華やかさの香りを感じさせながらも、
神経症的な心の闇を表現しなければならない複雑な役柄です。
青年座での初演時には看護婦役、1983年からはブランチの妹ステラ役を演じてきた高畑淳子さん。
今回、満を持してのブランチ役にかける熱い想いがカメラのレンズ越しにもビシビシと伝わってきます。
テレビのバラエティ番組で見せる「明るくてざっくばらん」な高畑さんはどこにもいません!
神経が細く、過去に大きな秘密を持つブランチ。
ふわふわと着飾って明るく振舞う時も、不安におびえてお酒に手を伸ばす時も、
演じる高畑さんから感じられるのは今にも壊れてしまいそうな「繊細さ」。
テネシーウィリアムズが描き続けた「精神のバランスを欠いて行く女性」を
とても細やかに演じてらっしゃいます。
集金人の青年(宇宙さん)に語りかけるシーンの、
夢なのか現実なのかわからない、観る者を混乱させるような演技に
思わず息をつめて見入ってしまいました!
神野三鈴さん演じるステラが、
時代と環境の変化に適応し、逞しく生きて行く姿とのくっきりとした対比も見応えあり。
姉・ブランチを気遣いながらも夫であるスタンレーにぞっこんで離れることが出来ないステラ。
スタンレーに甘える情熱的な演技の思い切りの良さ。劇場でご注目下さい♪
スタンレーを演じるのは東京セレソンデラックス主宰の宅間孝行さん。
男くさく荒々しい役柄です。
酒に酔って喧嘩をした後にステラの名を叫び続けるシーンも強烈です!
ブランチを冷たく見つめる目が印象的!
演出は文学座の鵜山仁さん。
穏やかながらどこかピリッとした眼差しで稽古を見つめます。
さらに音楽は世界で活躍するジャズピアニストの小曽根真さんが全ステージで生演奏。
演技に合わせてアドリブを交えての演奏です。
稽古場でも演奏されていたのですが、これが何ともかっこいい!
ここはニューオリンズのジャズバーですか?というくらい雰囲気満点♪
舞台上でも演奏する姿を見ることが出来るので、まるで「もう一人の出演者」のようだとか。
これは楽しみ!
今回キャスト・スタッフの皆さんは実際にニューオリンズへ行き、
アメリカ南部の空気感を確かめてきたそうです。
そして、そこで出会ったのは2005年のハリケーン・カトリーナによって破壊され、
廃墟となった遊園地「シックスフラッグス」。
ここで撮影された写真がモチーフとなった舞台美術も今回の見どころのひとつ。
埃っぽい南部の空気を感じる演奏と美術、実力派俳優たちのコラボレーション。
そしてテネシーウィリアムズが描いた「滅びゆくひとつの魂」を繊細な演技で表現する高畑淳子さん。
稽古を拝見しながらもその演技に引き込まれ、
時にクスッと笑わされ、時にゾクゾクっとするような色気を感じさせる高畑さんから目が離せませんでした。
この役にかける高畑さんの意気込み、ぜひ舞台でご覧下さい!
(写真左はミッチ役の小林正寛さん。写真右奥で稽古を見つめるのは医師役の金内喜久夫さん)
作:テネシー・ウィリアムズ
訳:鳴海四郎
演出:鵜山仁
音楽・演奏:小曽根真
出演:高畑淳子(青年座)、神野三鈴、宅間孝行(東京セレソンデラックス)、小林正寛(青年座)、
山本道子(文学座)、塾一久(文学座)、川辺邦弘(文学座)、金内喜久夫(文学座)、津田真澄(青年座)、宇宙(青年座)
おけぴ稽古場取材班&撮影:mamiko 監修:おけぴ管理人