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12/06/08 新国立劇場バレエ団「マノン」稽古場レポ&小野絢子さん本島美和さんインタビュー

2012年6月8日(金)15:00
★バレエ稽古初レポ★
新国立劇場バレエ団「マノン」稽古場レポ&小野絢子さん、本島美和さんインタビュー



優れた身体表現と音楽、衣裳、セット、照明・・。
様々な要素が絡み合う総合芸術・バレエ公演のお稽古の様子を初レポート!

新国立劇場バレエ団による「マノン」公演のお稽古場へお邪魔し、
作品が作り上げられる過程を拝見、
主役マノン役の小野絢子さん、本島美和さんにお話を伺いました。

まずはこの作品をご紹介。

アヴェ・プレヴォーの長編小説をもとに、
プッチーニのオペラをはじめ、絵画や映画など
数多くの芸術作品にインスピレーションを与えてきた、
ファム・ファタール(男たちを破滅に導く女性)“マノン・レスコー”。
美少女マノンと騎士デ・グリューを巡る、愛と嫉妬そして破滅へと向かう物語です。
(2001年には宝塚歌劇団によるミュージカル化もされています。)

今回上演されるケネス・マクミラン振付のバレエ「マノン」(1974年初演)は
20世紀の英国・物語バレエの傑作とも呼ばれています。
新国立バレエ団では2003年に初演され、今回待望の再演となります。

あらすじ
魅惑的で、天真爛漫で、気まぐれで、男たちを翻弄する美少女マノン。
恋の虜となった真面目な神学生デ・グリューは、次々と悪事に手を染め堕ちていく。
女の不実を知りながらなお離れられない宿命の恋は、やがて更なる悲劇を生む--。

主人公マノンを演じるのは新国立劇場バレエ団のプリンシパル小野絢子さんと本島美和さん。


小野絢子さん、左はマイレン・トレウバエフさん(ムッシューG.M.)


本島美和さんと福田圭吾さん(レスコー)、動きを確認する古川和則さん(右)


本島美和さんと山本隆之さん(デ・グリュー)


この日はメインで小野さん(マノン)、福岡雄大さん(デ・グリュー)、菅野英男さん(レスコー)の組、
平行して後方で本島さん(マノン)、山本隆之さん(デ・グリュー)、福田圭吾さん(レスコー)の組がお稽古をしていました。
もう一組ゲストダンサーとしてヒューストン・バレエのサラ・ウェッブさん(マノン) 、コナー・ウォルシュさん(デ・グリュー)を迎えた公演もあります。
そちらのレスコーは古川和則さん(ゲストダンサーのお二人の来日まで、他の組を参考にしながらのお稽古!)。

この作品の魅力である“芝居”部分が
緻密に作り上げられていくお稽古場場。
まず感じたのが、振りのひとつひとつが想像以上に芝居と密接に関わりあっているということ。
まるで言葉、台詞をやりとりしているかのように、
動きでドラマが紡がれていきます。

例えば、マノンを兄レスコーが富豪のムッシューG.M.に引き合わせるという場面。
その一瞬の切り抜いた写真の中、
紳士的に振る舞いつつ、マノンに興味津々なムッシューG.M.、
自分の魅力を自覚した上で駆け引きをするマノン、
そして彼女を利用し財産を手にしようとするレスコーと
それぞれの思惑が絡み合っています。

こちらはマノンに好意を寄せる老紳士、興味津々なムッシューG.M.、
利用しようとする兄レスコー、娼婦としての値踏みをする娼家のマダム。
マノンを取り巻く人々の思惑が絡み合う中、
その中心に立ち、彼らをスッとあしらうマノン。

動き(振り)や立ち位置、目線などで見事なまでに人間関係が表現されます。


福岡雄大さん(デ・グリュー)と小野さん

マノンとデ・グリューの出会いのシーン。
まるでお芝居のワンシーンの様で、
デ・グリューの表情からも一瞬にして心を奪われている様子が伝わります!

芝居を作り上げるその過程は、
「ここは“アラベスクをする”のではなく、“驚き”を表現しているんですよ」
「どうして歩き出すの?何かを発見したからでしょ」
このように“型”と“感情表現”のリンク、身体の動きの元にある心の動きについて確認作業が行われます。
時に先生方の中でもその解釈についてディスカッションがなされます。

メインで振付指導をされていたのはカール・バーネット(Karl Burnett)先生。
実際に動きながら、細かな振りを確認していきます。とても明るく、作品への愛情もたっぷり!


写真左のパトリシア・ルアンヌ(Patricia Ruanne)先生は、
「マノン」の上演指導を世界各地で行っており、作品への思いも深く指導にも熱が入ります。
そして、お二人の意図を的確に通訳し、
アドバイスされているのがイギリスのスコティッシュ・バレエ団で長年活躍した名バレリーナで、
現在は新国立劇場バレエ団芸術監督補の大原永子先生(写真右)。


と、ここまではお芝居作りとの共通点を取り上げましたが、
あくまでも、これはバレエ。
手をクロスさせる度合いや、より美しく見える腕の角度など、
動きの細かな指示も次々に与えられ、
それによってハッとするほど美しさが増します。


先生方の”in count”、”the most important moment”という言葉も印象的でした。
リアルな感情のうねりをカウントの中で表現しなければいけない、
比較的自由度のある振りについても、最初と最後の瞬間などはきちんとした決め事があるのです。
こうやってお芝居部分に力を入れられるのも、
基礎的な技術がしっかりとしているからに他ならないのですね。

ちなみに、マクミラン独特のアクロバティックなリフトを多用したデュエットの数々もこの作品の見所です!


湯川麻美子さん(レスコーの愛人)をリフトする菅野英男さん(レスコー)

新国立劇場バレエ団のプリンシパルでもある湯川さん、
マノン役のお二人とはまた違うちょっと勝気な雰囲気で印象的です。

様々な要素が求められる「マノン」、本番への期待がますます大きくなります!

お稽古終了後、主人公マノン役を演じる、
バレエ団を代表するプリンシパルのお二人にそれぞれお話を伺って参りました。

<小野絢子さんインタビュー>

小野絢子さん
東京都出身。小林紀子、パトリック・アルモン、牧阿佐美に師事。
小林紀子バレエアカデミー、新国立劇場バレエ研修所(第3期修了生)を経て、
2007年新国立劇場バレエ団ソリストとして入団。
主な受賞歴にアデリン・ジェニー国際バレエコンクール金賞などがある。
入団直後に、ビントレー『アラジン』の主役に抜擢され成功を収めた。
その後、『くるみ割り人形』、『白鳥の湖』、ビントレー『カルミナ・ブラーナ』、プティ『コッペリア』、
『しらゆき姫』、フォーキン『火の鳥』で主役を務め、着実にキャリアを積み重ねている。
2010年スワン新人賞を受賞。クラシック・バレエダンサーとしての恵まれたスタイルとピュアなテクニックで、
数多くの主役を踊り、高い評価を得ている。2011年プリンシパルに昇格。
平成22年度(第61回)芸術選奨文部科学大臣新人賞。第42回舞踊批評家協会新人賞。


おけぴ)
初日に向けお稽古が進んでいますが、いかがですか。

小野さん)
ここまで演劇に近いバレエは初めてなので、正直戸惑いはあります。
目の表情も本当に重要になっていますし、踊り自体が言葉を発することと同じようです。
テクニックのことなどを考えすぎてしまって、“思い”から動かないと、
「何を言っているかわからないわよ。」と指摘されることもしばしばあります。
この作品は、私自身はもちろん、バレエ団にとっても挑戦ですね。

おけぴ)
演劇的要素が強く、マノンの心情に寄り添うことで、役にのめり込んでしまうことはありますか。

小野さん)
ただ、やはりカウントがありますからね、どこか冷静な自分も居ます。
のめり込む、一歩手前がベストかな(笑)。
自分で役に入り過ぎると伝わらなかったりしますからね。
時々、自分で「良かった!」と思う日に、「あまり良くなかった」と言われてしまったり、
その逆があったり…必ずしも一致しないんです(笑)。

おけぴ)
では、今日はお芝居の部分を詰めていましたが、その前のプロセスを教えていただけますか。

小野さん)
「マノン」は原作があるので、まずはそれを読みました。
そしてオリジナルの映像を観て、音楽などはだいたい頭入れて、そこから実際に動く稽古へと進みました。

おけぴ)
ちなみに、芝居で言うところの台本のようなものはあるのですか?

小野さん)
はい、専門の知識がないと読むことはできないのですが
ノーテーション(Notation)という動きを記したものがあります。
ただ、今回のような芝居的要素が強い場合など、
表情や間などについては記述が無いので、そこは現場で実際に作り上げていく部分となります。

おけぴ)
先ほどのお稽古では二組が平行してお稽古されていましたね。
本島さんのマノンの存在は?

小野さん)
美和さん(本島さん)は研修所の一期生で三期生の私が入ったときは既に主役をされていて、スター的存在でした。
カルメンで鮮烈なデビューをされたように、
演劇的なバレエの経験もあり、コンテンポラリーも上手な方なので、色々と盗ませてもらっています(笑)。
また、他のキャストの様子を見ることで、その場面でのマノンの位置づけなど冷静に理解することができます。
客観的な視点で自分の役を見る、その時間は本当に有意義です。

おけぴ)
少し作品を離れますが、バレエダンサーとして日常生活で気をつけていることはありますか。

小野さん)
こだわり・・無いんですよねぇ。でもダメですよね、こんな答え(笑)
あ、よく食べよく寝ることです!これもダメかなぁ。

おけぴ)
いえいえ、やはり体力勝負なところもありますよね。
今のように公演のリハーサルがあるときも、基礎トレーニングなどされるのですか。

小野さん)
うちのバレエ団ではリハーサル前に、毎日1時間15分のレッスンをしています。
これは短いほうかも知れませんよ。

おけぴ)
体力も集中力もすごいですね。
実はリハーサル中のお姿から、
勝手にちょっと近寄りがたい印象を抱いていましたが(笑)、
こうしてお話を伺うと全然違いますね。

小野さん)
リハーサル中は緊張していますから(笑)
せっかくいただいたチャンスですし、もうやるしかないと必死です!!

おけぴ)
マノンとしての佇まい、さすがプリンシパルのオーラでした。本番も楽しみにしています。
では、最後にバレエ初心者向けに「マノン」の見所を!

小野さん)
この作品はバレエのことを知らなくても十分にお楽しみいただける作品だと思います。
繰り広げられるのは生身の人間のリアルなドラマ。
マノンだけでなく、乞食から大金持ち、様々な階級の生活が描かれていて、
舞台上で一人一人がお芝居をしています。
あまり先入観を持たずに、真っ白な心でごらんいただければ楽しんでいただけると思います。
もちろん踊りだけでなく、衣装、音楽、セットなど
総合的なものですので、何かしら気に入っていただけると思います(笑)
お待ちしています!


<本島美和さんインタビュー>

本島美和さん
東京都出身。牧阿佐美、三谷恭三、豊川美惠子、ゆうきみほに師事する。
1992年豊川美惠子エコールド・バレエ、1997年橘バレエ学校を経て2000年牧阿佐美バレヱ団に入団、
2001年に新国立劇場バレエ研修所に第一期生として入所。
2年間の研修を終えて、2003年より新国立劇場のシーズン契約ソリスト。
2005年の新制作『カルメン』で初めて主役に抜擢され、情熱的な演技とピュアな魅力で喝采を浴びた。
これまでに数多くの主役を務めている。のびやかな肢体と美しい容姿、華やかな存在感で広く注目されており、
出演したCMでの演技力が評価され、ACC CMフェスティバルの演技賞を受賞。
2006年に橘秋子賞スワン新人賞を受賞した。2011年プリンシパルに昇格。


おけぴ)
お稽古を拝見し、思った以上に芝居部分に重きが置かれていることに、正直驚きました。

本島さん)
この作品はバレエ作品の中でも、特に演劇的要素が強い作品なんです。
ただ、バレエは言葉がありませんからね。
目線一つでストーリーが伝わらなくてはけないので、
今は特にそこを細かく指導していただいているところです。
まるで演劇の授業みたいでしたね(笑)。

おけぴ)
タイトルロールでもあるマノンという女性をどのように捉えていますか。

本島さん)
まず、物語の舞台が18世紀のフランスですので、
今の日本では考えられない社会背景です。
今日、ご覧いただいた場面も娼婦の館ですし(笑)。
でも、娼婦といっても今の意味合いとは違う、日本に置き換えると花魁のような感じですね。
そして、彼女は15,6歳にして自分の美しさ、価値を自分でわかっているんです。
自分がどんな表情をすれば男性が自分のものになるかわかっている。
美しいけれど、決してイノセント(無垢)ではないんです。

おけぴ)
では、実際にマノン役をやるということについてはいかがですか。
稽古場で拝見して、その仕草や表情にすっかり魅了されました。
男たちを魅了していくにはとっても説得力ある、それぞれのマノンと感じましたが。

本島さん)
ありがとうございます。
「マノン」は世界中で愛されていますが、
トップレベルのバレエ団でしかできない作品でもあります。
9年前の日本での初演でも“日本のバレエ団が「マノン」をやる!”というだけでバレエ界では、
ちょっとした物議を醸すほどでした。
その後、小林紀子バレエシアターによる上演もされ(2011年)、
日本でこの作品をレパートリーとして持っている団体も2つになりました。
それでもマノン役の(日本人)女性は、酒井はなさん(新国立劇場バレエ団初演)、
島添亮子さん(小林紀子バレエシアター)と今回の私たち2人でようやく4人です。
誰もが出来るものではなく、また、やりたくて出来る作品でも無いので、
それを肝に銘じて、その喜びを感じながらリハーサルをしています。

おけぴ)
とても期待しています!
少し話題を変えまして、今回“演劇的要素”がキーになっていますが
プライベートで演劇などをご覧になることはありますか。

本島さん)
はい、お芝居も好きなので観にいっています。
最近では野田秀樹さんの「THE BEE」を観ました。
演劇は言葉がツールでありながら、
特に野田さんの作品などは身体表現が伴わないとキャラクターが活きてこないですよね。

おけぴ)
観劇からヒントを得るようなこともありますか。

本島さん)
演劇からは舞台での立ち位置というか、どういう位置にいるべきか、
人と人との距離感などの大切さ改めて感じます。
これはバレエにもとても大切なことです。
同じ台詞でも近くで言うのと離れて言うのでは違うように、
バレエも人と人とのコミュニケーションなので、
距離感や空間の使い方で伝わるものも変わってきます。

おけぴ)
なるほど!通じるものがあるんですね!では、最後に本島さんが思うバレエの魅力は。

本島さん)
えーと(笑)。
ストーリー、演劇があって音があって動きがあって、バレエです。
その全てをカウントの中でやらなくてはいけないところが、難しさであり楽しさです。
台詞が無いということは、逆に考えると言葉の壁がない―世界共通ということですよね。
バレエという動きさえあればそれが共通の言語となる。
それが一番の魅力だと思っています。 



小野さん、本島さん、お稽古後のお疲れのところ、ありがとうございました!


動きの美しさはもちろん、驚くほど緻密な“芝居”部分の積み上げ方、
描かれている人間ドラマ、そして生(LIVE)でこそ伝わる魅力をひしひしと感じた今回の取材。
確かな技術と豊かな感情表現が求められる新国立劇場バレエ団によるドラマティックバレエ「マノン」。
バレエ好きのみなさまにもバレエデビューのみなさまにもぜひご覧いただきたい作品です。


公演は新国立劇場オペラパレス(初台)にて。上演時間は約2時間35分(休憩含)。
<日程とマノン、デ・グリュー、レスコー役の出演スケジュール>
2012/6/23(土)16時
  マノン:小野絢子 デ・グリュー:福岡雄大 レスコー:菅野英男
2012/6/24(日)14時・26(火)19時
  マノン:サラ・ウェッブ デ・グリュー:コナー・ウォルシュ レスコー:古川和則
2012/6/30(土)14時
  マノン:本島美和 デ・グリュー:山本隆之 レスコー:福田圭吾
2012/7/1(日)14時
  マノン:小野絢子 デ・グリュー:福岡雄大 レスコー:菅野英男


詳細は公式ホームページをご確認下さい。


おけぴ取材班:chiaki、mamiko 撮影:mamiko 監修:おけぴ管理人


皆様からのコメント



美辞麗句の雑誌とは違って、お二方とも自然体で話されているのが伝わってきて、本当に素晴らしいインタビューですね!新国立劇場バレエ団にさらに愛着が湧きました。公演の成功をお祈りしております。

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名前:山野上 寛
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出身:大阪府茨木市
現住所:東京都中央区
もともとミュージカルには拒否反応があったんです。「なんで歌うねん」と。が、2000年、松たか子 ファンの後輩に誘われてみにいったオケピ!でミュージカルの拒否反応が消え、強引に連れていかれたライオンキングでスイッチが転換、夢から醒めた夢で初のリピート (6回)そして差し入れ・ファンレター初体験。 キャッツで初の名古屋遠征、 レミゼに感動。翌2001年、四季ハムレットで初のマチソワジーザス出待ち初体験、2002年モーツァルト!に興奮。2003年からは観劇に幅が出て、 2004年はラスベガス、ニューヨーク、ウィーンへと年3回も観劇ツアーに出かけてしまう。その勢いで2005年、会社を辞めて独立。現在2日1本ペースで感激中♪

役者さんにはまるポイント:声
感激ポイント:1幕最初の衝撃
好きなシーン:群舞、小芝居
大好きな演目:ルドルフ、星組ロミジュリ

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