12/09/28 響人第7回公演「橋からの眺め」稽古場レポ
響人第7回公演「橋からの眺め」稽古場レポ
2012年9月28日15:00
劇団四季でともに切磋琢磨してきたメンバーで立ち上げたArtist Company響人。
第7回公演では20世紀のアメリカ演劇界を代表する劇作家
アーサー・ミラーの「橋からの眺め」に挑みます!
響人4作目の演出となる小川絵梨子さん、
客演として中嶋しゅうさんや斉藤直樹さんらを迎える強力キャスト陣と
アーサー・ミラーの戯曲の融合は稽古段階からワクワクします。
1950年代のNYブルックリンに暮らす、港湾労働者エディを軸としたこの物語。
エディ役には吉原光夫さん。
妻と姪と慎ましくも幸せに暮らしていたエディが、
出稼ぎにきた密航者の従弟たちを匿いはじめることによってたどる人生を
吉原さんがタフに演じます。
エディと言う人物が“なぜ、その台詞を発し、そのように行動するのか”について、
繰り返されるディスカッションを間近で拝見し、
吉原さんの人物の掘り下げ方の深さ、緻密さをひしひしと感じました。
ちなみに拝見したのは、エディが従兄弟のロドルフォ(高橋卓爾さん)に
ボクシングを教えながら、その機に乗じて殴ってしまうというシーン。
(その裏には複雑な感情が。。。)
アクション専門の先生:後藤一機さんも参加して、
とても興味深いやりとりが繰り広げられました。
<ここだけの話>
吉原さんが稽古場に姿を現し、先生にご挨拶した瞬間の先生の一言。
「とても強そうな方ですね。。。」
<ここだけの話>
先生にパンチの繰り出し方を教わった高橋さん
「でも、あんまり本格的にやるとボクサーみたいに見えちゃいますかね。」
先生「大丈夫、こっから上(バスト辺りを指して)全然ボクサーじゃないから!」
高橋さん「え、顔がですか?笑」
先生「(笑!!)構えの肩の入れ方です!!」
ボクシングの意外なセンスを発揮しはしゃぐロドルフォを高橋さんが
本当に自然に演じます。パンチを受け止める吉原さんとの
「よし、いいぞ!今度はこっちだ!」というやり取りに、
思わず芝居であることを忘れてしまうほどの
“とある家庭の風景”になっています。
二人を見守るロドルフォの兄マルコ(斉藤直樹さん)と
エディの姪のキャサリン(宮菜穂子さん)。
斎藤さんの佇まいには常に緊張感が漂い、笑顔の奥にもちょっぴり影が差します。
そして、宮さんのキャサリンには溌剌とした中にある芯の強さを感じました。
こういったそれぞれ役としてのカラーをしっかりと持ってそこに居るので、
一見和やかな彼らの暮らしが実は微妙なバランスの上に
成り立っていることが伝わってくるシーンです。
それはもちろん、この方からも感じました。
エディの妻ビアトリス(末次美沙緒さん)の優しさと厳しさの両方が
感じられる声の響きが絶妙です!
そんな日常の一コマな空気を一変させるのが、こちらの瞬間です。
エスカレートした「ボクシングの練習」の中で、
エディのパンチがロドルフォに命中。
思わず?意図して?
楽しさから一転、一瞬にして緊張が走ります。
(ここでは先生から、アクションの見え方&安全性についてレクチャーが!
怪我しちゃいけませんからね!でも、本当に流れの中で、
芝居のリズムの中でのやり取りだとちょっとしたタイミングで
危険と隣り合わせなんですよね。)
心配そうにロドルフォに駆け寄るキャサリン
この全てを見透かしたような眼差しがとても印象的でした。
こちらは、小川さんも参戦!!ではなく。。。
アクションのテンポ感やポジションの移動などは、
実際に小川さんも動いてみながら最適なものを見つけていきます。
実際にはほんの数分の出来事ですが、場の空気がガラリと変わる
とても重要なシーン。
計算され尽していながら、ナチュラルに見える。演技の醍醐味ですね!!
こうして作られたアクションシーンは、見ているだけでも
心拍数が上がりそうになる、エネルギーの凝縮したシーンです。
会話の緊張感とはまた違う緊張感が、芝居の中の良い緩急になる予感です!
レコードプレイヤー
電話
個人的に響人の稽古場にうかがうととても楽しみなのが、
こういった小道具たち。
今年も50年代のアメリカ~~ンな小道具があちらこちらに!
思わずシャッターを切ってしまいました。
テーブルや椅子もなかなかいい雰囲気です。
そして、今回の公演では写真↓のようなステージシートが用意されています!!
ステージシートからは、まず、“舞台が近い!”
まるで作品の一部?になったかのような、登場人物の視点での景色が広がるお席!
そこからは通常の座席からの見え方と異なる、文字通り、
物語を多角的に見ることができそうです。
(注:開演後はステージシートへの移動不可となります。)
稽古場の壁には当時のブルックリンの街、人々の写真が貼られ、
土地や時代の持つ空気もしっかりと共有されています。
また、拝見したシーンの稽古には不参加でしたが、中嶋しゅうさんも
芝居のキーパーソンとして登場します。
そこに居るだけでじわじわと伝わる味のある、無二の存在感が
どう作品に絡むのかワクワクします。
そうそう、芝居の世界を余すところなく楽しむには遅刻厳禁ですよ!
お時間に余裕を持って劇場へ行きましょう♪
アーサー・ミラーが綴った物語を響人流の解釈と表現で
体現する「橋からの眺め」、本番がますます楽しみになりました。
実はもうワンシーン、アクションの稽古があったのですが、
そちらは見てのお楽しみ!
でも<ここだけの話>を!
響人メンバーも斉藤さんもダンスの素養のある方ばかり!
そんな中、小川さんから先生へのリクエストは
「そこのアクション、もっとカッコ悪く見えるようにお願いします。」
無意識にスッと立ち上がったり、パッと構える。
そしてそれがカッコいい!
「運動神経の良さが、出ちゃってるんだよね。。。」
出来る人ならではの悩みってやつですね。
<公演概要>
作:アーサー・ミラー
演出:小川絵梨子
出演:吉原光夫 斉藤直樹
高橋卓爾 宮菜穂子 清家とも子
香川大輔 安田洙福 羽吹諒
末次美沙緒
中嶋しゅう
2012年10月4日~10日@テアトルBONBON
作品HP
おけぴレポ隊&撮影:chiaki 監修:おけぴ管理人