11/12/02 「みんな我が子」ゲネプロレポート@新国立劇場小劇場
2011年12月2日(金)13:00
「みんな我が子」ゲネレポ@新国立劇場小劇場
アーサーミラーによる戯曲の力!
素晴らしいキャスティング!
ブロードウェイで活躍する気鋭の演出家、ダニエル・カトナーさんを始めとする
一流のスタッフワーク!
「これだから観劇はやめられない!」
と帰り道にひしひしと実感したおけぴ管理人・興奮のゲネレポです!
物語の舞台は第二次世界大戦が終わった後のアメリカ中西部のある町。
戦争特需で会社を大きくし、成功を収めたジョン・ケラー(長塚京三さん)と
その妻ケイト・ケラー(麻実れいさん)。
一見、誰もが羨むような穏やかで豊かな生活をおくっている家族の物語。
次男ラリーが戦地で消息を絶った後、表面上は明るく振舞いながらも、
人生を先に進めることを中断してしまうケイト(麻実れいさん)。
麻実さんの演技、深い絶望感と“恐れ”に打ちのめされる客席!
普段は従順で明るい妻でありながら、ラリーの話になると見せる狂気じみた“母”の顔。
戦争から帰還した長男クリスを演じるのは田島優成さん。
彼もまた戦争で部下を失くし、
その戦争で父が得た成功を引き継ぐことにある種の後ろめたさを感じて葛藤を抱えています。
幼馴染であり、弟の恋人でもあったアニー(アン)との間に芽生える愛を大切に思いながら、
心のどこかで幸せになることを恐れているクリス。
模範的なアメリカ青年らしく明るく振舞う姿が切ない!
戦地で行方不明になったままのラリーを“もう待っていない”と言い切るアン。
演じる朝海ひかるさんがとっても可憐(衣装がどれも素敵!)。
秘密を抱えたミステリアスな雰囲気と、クリスとの未来を夢見る希望が同居するアン。
物語のカギを握る重要な役どころです。
アンの兄・ジョージ役の柄本佑さん。
ケラー家への屈折した感情・・。
登場するだけで舞台上に不穏な空気が充満する稀有な雰囲気を持つ柄本さん。
ふっと力を抜いて飄々と笑わせる場面もあり、
その緩急の付け方、ベテランの麻実さん長塚さんと対等に渡り合う独特の存在感!
ケラー家の隣人、ジムとスーを演じるのは山下容莉枝さんと隆大介さん。
“良き隣人”であり、たくましく現実を生きている彼らがふと見せる別の顔・・。
ケラー家の人々との対比が鮮やか!
さらに、徴兵を免れ、妻と子供に恵まれ幸せに暮らすフランク(加治将樹さん)の存在が、
さらにケラー家の悲劇を際立たせます。
浜崎茜さんと柄本佑さんのとの場面にもご注目下さい(管理人的お気に入りです)。
裕福で健全で幸せなアメリカ家庭を象徴するような
真っ白いセット(美術は堀尾幸男さん)は極めてシンプル。
それゆえに浮かび上がる登場人物たちの心の陰影。
とにかく出演者全員の演技力の高さ、
そしてそれを的確に引き出す演出力が素晴らしいです!
さらに拍手を送りたいのは伊藤美代子さんによる新訳の自然な響き。
翻訳劇にありがちな“ひっかかり感”がなく、
ごく自然に、耳に頭にそして心に届く台詞たち。
言葉が持つ余韻や強さにまで心配りされた台詞でした!
長塚京三さんが
“いつかこういう役をやるために、これまで俳優をやってきたという気もする”と語る、
アーサー・ミラー作品の “父親”像。
自分の腕一本で世の中を渡り、
家族の為に懸命に働き、強さと弱さを同時に持つ“父”の姿。
長塚さんの演じるジョー・ケラーを見ているとギューっと胸が苦しくなり、
ふとした瞬間に涙がこぼれそうになってしまう事が何度もありました。
父、母、息子、夫、妻・・すべての登場人物が、
多面的で複雑な内面を持ち、
人生と人間の真実がたっぷりと盛り込まれた“演劇的悦楽”に浸れます。
決して明るく楽しくゴージャスな舞台ではありません。
それでも「気づき、考え、感じさせてくれる」作品に出会えたことを感謝したくなる・・
そんなお芝居です。ぜひ劇場で感じてきてください!!
アーサー・ミラー作・ダニエル・カトナー演出「みんな我が子」は
12月2日~12月18日まで新国立劇場小劇場にて、
12月20日~21日までサンケイホールブリーゼにて上演。
出演:
長塚京三、麻実れい、田島優成、朝海ひかる、柄本佑、隆大介、山下容莉枝、
加治将樹、浜崎茜、坂口湧久/鈴木知憲(子役Wキャスト)
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