12/10/22 新国立劇場「るつぼ」稽古場レポート
2012年10月22日(月)15:00
新国立劇場「るつぼ」稽古場レポート
アーサー・ミラー戯曲独特の“圧迫感”を200%堪能!
その圧迫感が“演劇的快感”に変化する瞬間・・・「やっぱり演劇っていいっ!」
そう叫びたくなりました!
新国立劇場に初登場する、
現代アメリカ演劇界の巨人、アーサー・ミラー作の「るつぼ」。
通し稽古レポートをお届けいたします!!!
明治以降の日本演劇に海外の戯曲が与えた影響を検証していくシリーズ
新国立劇場[JAPAN MEETS・・・-現代劇の系譜をひもとく-]の第7弾。
17世紀末にアメリカのある町で実際に起きた魔女裁判を題材に、
アーサー・ミラーならではの冷徹な眼差しで人間の本質をえぐりだす
緊迫のストーリーが圧倒的なボリュームで展開します。
(ダニエル・デイ・ルイス&ウィノナ・ライダー共演の映画「クルーシブル」の原作です!)
良心と信念に従い、破滅に向かっていく“アーサー・ミラー的”主人公を演じるのは、
この作品が初の主演舞台となる池内博之さん。
舞台上で苦悩しまくる池内さん、
こんなにも端正なビジュアルからは想像できない激しさで熱演です!
そして、彼を翻弄し追い詰める美少女を演じるのは鈴木杏さん。
この美少女が・・・なんとも・・・怖い!怖いんです!!
池内さん演じる農夫と不倫関係にあり、その妻の座につけると信じきっている少女。
彼女が森の中で仲間たちと全裸で踊っているのを発見されるところから物語は始まります。
少女たちが悪魔を呼び出す儀式を行なっていたのではないかという疑いから、
町は疑惑が疑惑を呼ぶパニック状態に。
(このくだり、ちょっぴり映画「エクソシスト」風でおもしろい♪)
悪魔祓いに駆けつけたヘイル牧師を演じるのは文学座の浅野雅博さん。
(こまつ座「闇に咲く花」の好演も記憶に新しいですね)
もちろん物語は単なるエクソシスト・ストーリーでは終わりません。
悪魔を呼び出していたと告発された黒人女性(田中利花さん:上の写真中央)を皮切りに、
少女たちによって次々に名指しにされていく住人たち。
(写真後列左から 檀臣幸さん、木村靖司さん、松熊つる松さん)
これまで町の人々から篤い信頼を得ていた善良な婦人(佐々木愛さん)も、
街の有力者と所有地をめぐって争っていた老人(関時男さん:写真左)も、
次々と逮捕されていく中、
ついに少女たちの告発の手は池内さん演じる農夫の妻にまで及びます・・・。
神を信じ、夫を信じ続ける妻役は栗田桃子さん(写真右)。
「父と暮らせば」で彼女のファンになった方も多いはず。
今回も清楚な佇まいの中に強さを感じさせる演技が素晴らしい!
法と、保身のために人々の訴えに耳を貸さない判事(磯部勉さん)の登場により、
町の人々の運命はどうなるのか・・・!?
人間の愚かしさ、弱さ、そしてそれによって引き起こされる悲劇。
この物語が、実際におこった事件を元に書かれているという事実を、
観客である私たちはどのように受け止めたらいいのでしょうか。
戯曲が発表された1950年代、
アメリカに巻き起こった「赤狩り」の嵐を痛烈に批判したというこの作品。
2001年に起こった9.11同時多発テロを機にアメリカで再演、
そしていま、日本で上演されるその意味は舞台をご覧になればきっと納得されるはずです。
上演時間は3時間45分(休憩込み)、
圧倒的なボリュームで迫り来るアーサー・ミラーの世界。
観劇後にはぐったりと力が抜けてしまうかもしれませんが(笑)、
それこそがこの作品を観る醍醐味といえるでしょう!
演出は新国立劇場演劇芸術監督の宮田慶子さん。
丁寧に、繊細に人物の心理を描写しつつも、ダイナミックに物語をみせていきます。
新国立劇場ならではの衣裳やセットのクオリティもお楽しみに!
人間の持つ信仰心とは、権力とは、罪、許しとは何なのか。
そして人が人を裁くということとは・・・。
息づまる展開に舞台から一瞬も目を離すことができない“演劇的快感”。
頭も心も忙しく働かせながら、その快感をお楽しみくださいね!!!
【公演情報】
2012年10月29日(月)~11月18日(日)
新国立劇場 小劇場
【出演】
池内博之 鈴木杏
田中利花 関時男 木村靖司 檀臣幸 浅野雅博
松熊つる松 栗田桃子 佐川和正 亀田佳明 深谷美歩
武田桂 日沼さくら チョウ・ヨンホ 梨里杏 奥泉まきは
磯部勉 戸井田稔 佐々木愛
【スタッフ】
作:アーサー・ミラー
翻訳:水谷八也
演出:宮田慶子
新訳を手がけた水谷八也さんによる作品解説も充実、
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おけぴ取材班・撮影:mamiko 監修:おけぴ管理人