監督: 黒澤明
製作: 田中友幸/菊島隆三
原作: エド・マクベイン 『キングの身代金』
脚本: 小国英雄/菊島隆三/久板栄二郎/黒澤明
撮影: 中井朝一/斎藤孝雄
美術: 村木与四郎
音楽: 佐藤勝
監督助手: 森谷司郎/松江陽一/出目昌伸/大森健次郎
記録: 野上照代
照明: 森弘充
出演:
三船敏郎 / 権藤金吾
香川京子 / 権藤の妻伶子
江木俊夫 / 権藤の息子純
佐田豊 / 青木(運転手)
仲代達矢 / 戸倉警部
石山健二郎 / 田口部長刑事(ボースン)
木村功 / 荒井刑事
加藤武 / 中尾刑事
三橋達也 / 権藤の秘書河西
伊藤雄之助 / 専務馬場
志村喬 / 捜査本部長
藤田進 / 捜査一課長
三井弘次 / 新聞記者A
千秋実 / 新聞記者B
東野英治郎 / 年配の工員
藤原釜足 / 病院の火夫
沢村いき雄 / 横浜駅の乗務員
山崎努 / 竹内
【おはなし】
権藤(三船敏郎)は、会社を乗っ取る気でいた。自宅を担保に借金し、他の重役を退けるつもりだった。
そんな折、息子が誘拐に遭ってしまう。
いや、犯人は間違えた。権藤の運転手の息子をさらってしまったのだ。
ところが、おかまいなしに身代金の要求をしてくる犯人。
電話の向こうで犯人は笑っている「いや、あんたなら払うね、権藤さん」
権藤は他人の子のために身代金三千万円を払うことになるのだろうか。
【コメントー閻魔様どうかお許しくださいー】
中学のとき(88年~91年)、目前の奈良京都修学旅行を控え、僕たちが気になっていたのは鹿でも金閣寺でもなく、誰と一緒の班になるかであった。 担任の先生は野暮なことはしなかった。 僕たちは顔を見合わせた。 ついに、意を決した一人が「じゃ、俺あっち入るわ」と笑顔で言い、背中を向けて去った。 映画「天国と地獄」の序盤の見せ場は、権藤(三船敏郎)が三千万円を他人の息子のために支払うかどうかの葛藤にある。 エド・マクベインの原作のこの部分に黒澤監督は着目したのだそうだ。 黒澤作品には「用心棒(61年)」から入門した僕だったが(※)、時代劇のみならず現代劇でもこれだけの娯楽作があったのだと、うれしくて仕方がなかった。 脚本に黒澤を含む四人の名前がクレジットされているが、黒澤監督は大抵の作品において複数人で脚本を執筆している。 権藤が苦悶した自己犠牲のあり方は僕の心を打ったはずだったのに、修学旅行の班決めでは、他の皆のために自分が犠牲になるなどということは、毛の先ほども考えられなかった。 あれから時は流れた。 こんな僕を、どうぞ地獄に落として下さい。
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