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「デス・プルーフ in グラインドハウス」~喋り過ぎにご注意を~
クエンティン・タランティーノ監督

デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007年

監督: クエンティン・タランティーノ
製作: クエンティン・タランティーノ/ロバート・ロドリゲス/エリザベス・アヴェラン/エリカ・スタインバーグ
製作総指揮: ボブ・ワインスタイン/ハーヴェイ・ワインスタイン
脚本: クエンティン・タランティーノ
撮影: クエンティン・タランティーノ
プロダクションデザイン: スティーヴ・ジョイナー
衣装デザイン: ニナ・プロクター
編集: サリー・メンケ

出演:
カート・ラッセル / スタントマン・マイク
ロザリオ・ドーソン / アバナシー
ローズ・マッゴーワン / パム
シドニー・ターミア・ポワチエ / ジャングル・ジュリア
ゾーイ・ベル / ゾーイ
マイケル・パークス / アール
メアリー・エリザベス・ウィンステッド / リー
ヴァネッサ・フェルリト / アーリーン
ジョーダン・ラッド / シャナ
トレイシー・トムズ / キム
マーリー・シェルトン
ニッキー・カット
イーライ・ロス
クエンティン・タランティーノ / バーテンダー


【おはなし】

ギャルたちは休日を別荘で過ごすつもりだった。
車で向かう途中バーに入って、男を誘惑し、ハッパを吸って、いつもの通り奔放に振舞っていた。
そこへ、黒い車に乗った一人の中年男が現れる。


【コメントー喋り過ぎにご注意をー】

雑談が好きだ。
雑談は楽しい。
気の置けない友人達と、ただ喋るだけで僕は充分な満足を感じる。
どこかへ旅行へ行ったとして、観光地を巡ることよりも雑談することの方が重要である。
ファミレス(居酒屋)から旅先へ、ただ場所を変えただけのこと。
場所が変われば雰囲気も変わる。
雰囲気が変われば雑談の内容も変わる。
雑談のバリエーションの変化が楽しめる。
雑談のために旅行へ出ると言うのは、言い過ぎかもしれないが。
だが、それほどに、僕にとって雑談は欠かせぬものだ。

しかし、雑談が楽しいのは当人たちだけで、部外者にとってはこれっぽっちも愉快なものではない。
居酒屋でも電車でも、大声で話している連中のことを煙たく思う僕である。
「静かにしろ!」と若者をたしなめる老人が出現したときなどは、内心拍手を送っている。

先日「デス・プルーフ」という映画を観てきた。
この映画の大半は雑談で進行する。
いや、大して進行もしない。
ひたすらに雑談をしている模様が映し出される。

他人の雑談は退屈なものだが、この映画で雑談しているのは美女である。
長い脚と、ぷりっぷりのヒップを見せつけるようにして雑談している。
実にくだらない、聞いても何の得もないような話題(もちろん男の話題)を、とにかく喋り続ける。
いい加減にしたまえ、とイライラさせられもするが、もの凄い脚線美に釘付けになってしまったのも事実。
そしてこのイライラ感は、この映画に意図的に仕組まれたものだったと、後で知ることになる。

いわゆる「セクシー」を売りに生きている若い女性のキャラクターが、幾人も登場する。
黒人も白人も、金髪も黒髪も、一通りのアメリカ美女が全編に及んでスクリーンを満たす。
中でも一際目を引く美女が、ジャングル・ジュリアを演じたシドニー・ターミア・ポワチエ
シドニー・ポワチエと言えば、映画「いつも心に太陽を67年)」などの主演俳優である。
それはもう誠実な役柄に定評があり、アメリカで初めて成功した黒人俳優として映画史にその名を刻む名優である。
その娘さんが、あんなセックシー女だったとは、驚いた。
タランティーノ監督の意図を感じる。
父の硬派を逆手にとって、超軟派娘のキャラクターを作っている。
しかし、それ以前にシドニー・ターミア・ポワチエが魅力的な顔と肉体を持っていることに、疑問の余地はない。
この女優さんは、きっと売れます。もう売れてるのかな。

僕はアメリカに行ったことがないので、本当にアメリカのセクシーギャルがああいった喋り方や、表情をするものなのか知らない。
少々の誇張を忍ばせているであろうことは想像に難くない。
でも、クエンティン・タランティーノ監督の示すアメリカ感(※)には、毎度グッと来るものがある。
いつか見たアメリカの幻影がそこにはある。
今回の「デス・プルーフ」では、アメリカ美女の在り方が、アメリカB級映画のそれであった。
ホラー映画で襲われる美女。それと、アマゾネス的強靭美女。
映画の娯楽性を、タランティーノはカラッとした馬鹿臭さで表現する。
思わず「さいこー!」と叫びたくなるような映画を、彼は今回も作ってくれた。
この映画を「さいこー!」と評するような人物は、ちょっと信用しかねる。
だが僕自身は「さいこー!」だと思った。

タランティーノの映画は与太話
雑談そのものであり、僕はそれに同調したから最高だったのだ。
だが、誰かがこの映画を最高と言うことに関しては、それは他人の雑談の域に入るから僕には煙たい。
この心情、分かっていただけるでしょうか。

映画「デス・プルーフ」は、雑談のモデル級美女と、カート・ラッセルの男臭いおじさん振りが相まみえる、いびつな作品に仕上がっている。
一体どういう接点を持ってこの両者が出会うのか、見どころである。
どうでしょう、この映画で他人を気にせず「さいこー!」と叫んではみてはいかがでしょうか?

※タランティーノ監督の描くアメリカ感について「パルプ・フィクション」の記事でも触れています。→こちら(07年7月25日の記事です)


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About

●2007年09月09日 20:46に投稿された記事です。

●ひとつ前の投稿は「「イースター・パレード」~美技、内股~ チャールズ・ウォルターズ監督」です。

●次の投稿は「「天国と地獄」~閻魔様どうかお許し下さい~黒澤明監督」です。

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