09/02/11 劇団鹿殺し ベルゼブブ兄弟@赤坂レッドシアター
2009年2月11日(水) 14:00
劇団鹿殺し ベルゼブブ兄弟
C列11番@赤坂レッドシアター
最初から最後までパワーに圧倒されました。
冒頭はスプラッター的なシーンからはじまりますが、
丸尾丸一郎さんの独特の語りから、
フラッシュバックして。。。っと蠅登場!
おおおおおお!蠅のパワーおそるべしです。
ベルゼブブっベルゼブルっ、
あの蠅たちがいまだに私の頭の中でブンブンしながらそう叫んでます。
出演者一人一人が強烈な個性を持ってる感じですが、
よくみると、皆さん眉がない。これは何かを象徴してるんでしょうか。
また、羽根田家以外のキャストさんは皆さん一人何役もしてるので、
え?この方さっきのあの方と同じ!?とびっくりしたりも。
オレノグラフィティさんのトシゾウ(あごにもご注目)や、
森下亮さんのアマンダ(あ、足が美しいー)はかなり強烈なキャラクターなので、一瞬他の役で出てきてもわからないくらい。
中でもかなりインパクトというか、圧倒的存在感を出していたのが、
父親、正造役の今奈良孝行さん。
びびります。こわいです。でも、後半、これがぐっとくるんですねぇ。
菜月チョビさんは、なんというか、ほんとに、不思議な、
独特の魅力をお持ちですよね。そしてあのしゃべり方と、
ちっちゃさがいい。そしてボーカルの歌声も素敵です♪
お通夜の場面では参列者達の行動に唖然として今でも思い出し笑いしてしまいます。
た、たべますか!?
残酷さがありつつも、どこかあたたかな、また家族のつながり
のようなものを感じるお話です。
ラストは・・・・なかなか壮絶ですが、
それ以上に受けるパワーがすごかったです。
決して美しい物語ではないと思うのです。
泥臭い田舎の家族の話です。
それなのに、物語が終えられたとき、清冽な美しい気持ちになったのは、彼ら家族の世界があまりに閉じて完結したものであるからでしょうか。
「ベルゼブブ兄弟」を歌う四兄弟の姿は、本当に無人島に四人だけでいるかのように他の何者をもよせつけぬ風情でした。
美しさは、また、ストーリーラインだけにあるのではありません。
丁寧に作り込まれた舞台装置は、ともすれば独り善がりなものにもなり得るほど詰め込まれた素材を視覚的に整理してくれ、予測のつかない動きで観客を驚かせてくれましたし、照明の使い方――特に素晴らしいと感じたのは、倉の窓から差し込む光の美しさです――には目を瞠るものがありました。
これほど思い入れの強い、かつ観客を楽しませることを意識した演劇を観ることができ、本当に僥倖でした。
と、書いて、ふとリーフレットを開くと、蠅がたくさんいました。愉快味のある良いリーフレットだと思います。
けれど、蠅の王がキャスティングされていません。
蠅の王は誰なのだろう?
そして、ふと振り返って彼らの言葉を思い出したとき、どうしても引っ掛かることがあるのです。隆志に対する正隆の台詞――おまえなんか本当の兄弟じゃない。隆子に対する正隆の台詞――死んでしまえばいいんじゃ。二人に対する正隆の台詞――おまえらが来て俺たち家族はおかしくなったんじゃ。
正隆は、四人の間に流れる本当の兄弟の空気が好きだったと独白しました。
そう思っている人間が、たとえ武器を向けあっていてもこんな台詞を吐くものか?
蠅の王の降臨は誰の帰郷と共にあったか? 蠅のごとく殺戮された家族の中で生き残ったのは誰か? 正造を、隆志を、隆子を、正弘を、最も憎んでいたのは誰か?
蠅のいう三人の狂人と一人の預言者とは、本当に四兄弟のことだったのか?
そう考え始めると、私は再びあの薄暗い極彩色の座敷の謎解きに心を囚われてしまうのです。ですから、この作品は、決して「家族の破壊と再生」を描いた温かいだけの、美しい物語ではないと思うのです。
パワーあふれる舞台ですね。
前後の空間の妙、さしこまれるライブ
圧倒されました。
見続けたい劇団ですね。