11/09/30 新国立劇場公演「イロアセル」稽古場レポ
2011年9月30日(金)14:00
「イロアセル」稽古場レポ
話す言葉に「色」がつくという不思議な島を舞台に
無色透明の言葉を話す囚人がやって来たことから始まる物語「イロアセル」。
「色のついた言葉をしゃべる人々」という前代未聞の設定を舞台上でどのように表現するのか。
演出家の鵜山仁さんをはじめとするスタッフのみなさんが、
この演劇的ミッションをクリアするべく用意した「特別な仕掛け・装置」を
今回ほんの少しだけですが公開していただきました!
こちらの写真は主人公の囚人役を演じる藤井隆さんと、
前科のある女として島民に忌み嫌われているナラ役を演じる島田歌穂さん
~物語~
とある小さな町。
その町の住民の声や文字には色があり、全員それぞれ異なる色を持っている。
そのせいで、いかなる手段で発言しようと、固有の色によって個人が特定できてしまう。
そのため彼らは常に慎重に発言しウソをつかない。
ある日その町の広場に檻が建設され、
その中にいかにも善人そうな一人の男が収監されるが、
この男との会話は無色透明だった。
やがて住民たちは男のもとを訪れ、あれこれ打ち明け話をする。
人々の話は重複することも多く、その都度同じ意見を言うのは非合理なので、
やがて男は島民の一人に宛てた手紙を書く。
手紙はすべて島民の知るところとなり、
新聞のような影響力を持つ。
そのことで、島の社会は・・・、人々は・・・。
囚人という役柄のため、劇中のほとんどを格子の中で過ごす藤井隆さん。
彼の言葉は無色透明。
そしてこの牢獄が置かれている丘の上では全ての人の言葉が無色になるという設定の為、
このシーンでは特に変わった仕掛けは見られません。
テレビで拝見するのとはひと味もふた味も違う、俳優・藤井隆さん。
不思議なほど舞台に馴染む演技。そして緩急の付け方はさすがです!
丁寧に演出をつけて行く鵜山仁さん(舞台下)
加藤貴子さん演じるアズルは島で人気の競技「カンチェラ」の世界レベルの選手。
謎のスポーツ(?)カンチェラとは一体どんな競技なのか。
作者の倉持裕さんが作り上げた「謎」だらけの物語。
その魅力的な「謎」のひとつひとつが舞台の上で具現化されていきます。
と、ここで!
ゴゴゴ・・と上がって来たこれは・・??
天井からワイヤーで吊るされた幅8メートル、縦6.5メートルの巨大な楕円形。
そこに映し出されたのは、まるで煙のようにうごめく「色」。
剣幸さん演じる町長が喋る言葉の「色」は黒。
声の大きさや早さに合わせて「色」がモワモワーッと形を変えていきます。
この写真では「色」の部分が小さいのですが、
実際の舞台では楕円形のスクリーンいっぱいに「色」が広がり、
さらにその後ろにも別のスクリーンが現れ、
まるで劇場全体が「色」に包まれたような空間になるとか!
こちらは台詞に合わせて「色」をコントロールするスタッフさん。
加藤貴子さん演じるアズルの「色」は美しい青。
(左はライ役の高尾祥子さん)
このスクリーン、重さはなんと110キロもあるのだとか。
マイクを使って集音された声に反応して動き、形を変えて行く「色」。
台詞と連動する不思議な動きは、まるで現代美術のインスタレーションを見ているような感覚です。
実際の劇場いっぱいに広がる「色」を早く見たい!という気持ちになりました♪
ツイッターやブログなどを通して、
誰もが気軽に自分の「言葉」を世界に向けて発信出来るようになった現代社会。
話すそばから消えて行く「言葉」と、記録され伝播していく「言葉」・・
劇場ならではの表現で、こんなテーマを投げかけてくる作品
「イロアセル」は10月18日~11月5日まで新国立劇場小劇場にて上演。
19:30開演日程もあるので(10/28・金曜日)、仕事の帰りに観劇したい!という方にもオススメです。
出演は他に小嶋尚樹さん、松角洋平さん、花王おさむさん、ベンガルさん。
劇作家としては新国立劇場初登場となる倉持裕さんの書き下ろし作品を、
前・演劇芸術監督の鵜山仁さんが演出するのも話題のひとつ!
皆さんが肩から下げている不思議なカバンのようなボックス。
何に使うものなのか、ぜひ劇場でお確かめ下さい♪
「イロアセル」を含むシリーズ[美×劇] -滅びゆくものに託した美意識-の
3作品共同製作発表の様子はこちら
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おけぴ取材班&撮影:mamiko 監修:おけぴ管理人