12/01/20 音楽朗読劇「モリー先生との火曜日」稽古場レポ
2012年1月20日(金)
音楽朗読劇「モリー先生との火曜日」稽古場レポ
モリー先生からの贈り物(メッセージ)が心地よい演奏と歌、
そして朗読で届けられる音楽朗読劇「モリー先生との火曜日」。
“伝える”ことに徹底的にこだわった稽古場にお伺いして、
みなさんの“想い”を伺って参りました!
ALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵されたモリー先生とその教え子ミッチ・アルボム
の間で行われた“人生の授業”を描いた音楽朗読劇で、
悲しい、かわいそう、辛い、そういったお涙ものとは違う、
明るい光に包まれたような作品です!!
出演者は役者3人と音楽家2人、舞台上には椅子とピアノ。
とてもシンプルな舞台ながら、この上ない贅沢なひとときが始まります。
まず、美しい旋律がすーっと浸透♪
(この日はバイオリン奏者の真部裕さんはいらっしゃいませんでした。残念)
ピアノ演奏の小原孝さんの前には脚本と楽譜が並べて置かれ、
ある言葉が発せられると、すっと音が消える。
また、あるフレーズが語られるとそれに寄り添うようなメロディが奏でられる、
音と言葉、気持ちが見事に調和しています。
これはもう、生演奏ならでは!
そして、朗読と歌で物語を綴るキャストの皆さんがこれまた魅力的!
まずはモリー先生役の光枝明彦さん、
哲学的な重みのある言葉はずっしり響かせ、そしていたずらっぽく
優しく微笑む、まるでモリー先生がそこにいらっしゃるかのような
光枝さんの存在感。
ユーモアのあるシーンでの軽妙な芝居には自然にこちらも笑顔に!
ちょうど伺ったとき、演出の山崎義也さんに動きの面でアイデアを
お話されていた光枝さん、そのことについてお尋ねすると。
「役者ですからね、ついつい身体の痛みや苦しみ、息使いなど
リアリズムを追求してしまいがちなんです。
でも、忘れてはいけないのは、ひとつひとつのメッセージが
心地よく伝わっていくことなんですよね。
原点に戻らないといけないなと思いまして、身体の動きなど
もうちょっと自由にしてもいいのかなと思い始めております。」
この作品については
「モリー先生の深い経験から生まれる言葉、単に言い方を
変えてみるとかそういうことではなく、まず、ひとつひとつの
言葉のその奥にあるものを色々な角度から探っていくこと、
その作業こそが大事だと思っています。」
光枝さんを通して届けられるモリー先生の言葉、心にダイレクトに響きます!
続いて、かつての教え子で、今はスポーツコラムニストとして
仕事に忙殺される日々を過ごしているミッチ役には吉原光夫さん。
今回の公演からのニューキャストです!
この作品の第一印象について
「出演の話をいただいた時、最初タイトルだけ聞いて、
子ども向けのアドベンチャーものかなって思いました(笑)。
実際に読んだら、まず、“本が良いな”と。
そして、僕はこう…稀に見る印象的な容姿をしているので(笑)
キャラクターが大丈夫か確認しました。」
これにはすかさず、山崎さん、そして土居さんからも!
「そのギャップがいいの!!」との声が!
まさにそうなのです。
優しく深い声がミッチの本来の人柄にピッタリです。
また、初の朗読劇というスタイルについては
「難しいですね。今でも朗読ということに試行錯誤しています。
実は(朗読に対して)アンチだったんですよね。
突き詰めると結果的に(本を)取っちゃえばいいじゃんって。
でも、今、演じていて、普通の演劇ではできないものが中にも
外にも宿るのではないかと思っています。成功すればね(笑)
それは、普段やっている(役が)“その場にいる”とか
“モーメントを分かち合う”“会話する”そういった
舞台上の大前提を一度白紙にして、
モリー先生であったり、著者であるミッチであったり、脚本・訳詞の
(高橋)知伽江さんが書かれたものを“プレゼント”として、それを
一個一個丁寧にお客さんに渡していく感じですかね。
これって普通の舞台だとそれは結果としてもたらされる
ことなんですけどね。」
この朗読ならではの距離感、空気感。キャストや奏者のみなさんの
心と身体を媒介としてメッセージが丁寧に届けられる感覚はお稽古を
拝見していてもひしひしと伝わります!
いつの間にか自分も授業に参加しているような感覚です。
そして、ミッチの妻でプロの歌手ジャニーン役の土居裕子さん。
歌声も朗読の声も浸透力抜群です!
土居さんの語りかけるような歌声、ぜひ劇場で味わって下さい!
ジャニーンという役について
「私はジャニーンはこのシチュエーションの中でお客様と同じ
立場にいるという位置づけでやっています。
進行役という役割もあるので、常に、モリー先生とミッチの授業を
聞いているのですが、ひとつひとつの言葉が心に浸透していきます。
あ、そうなんだ!と勇気付けてもらったり、本当に授業を受けて
いるような、そんな気持ちになります。」
この作品については
「ALSという病もそうですが、不治の難病を患った方、そういう局面に
立った方の言葉ってなかなか聞くことはできないですよね。
でも、モリー先生は自分がやるべきだと思われ、言葉を残してくださった。
そしてそれを世界中の人が聞けるって凄いことだと思います。
この作品は色んな年齢層の方に観ていただきたいです。」
最後に音楽監督・ピアノ演奏の小原孝さんにお話を伺いました。
再演にあたり、改めてテーマと向き合っていかがですか。
「もちろんスタートはALSでしたが、他の病気の方や病気以外の人にも
それぞれの悩みがあったり、痛みがあったりしますよね。
そういった方にも伝わる言葉がいっぱいありますので
むしろALSを通して、それ以外にも広がりを
持ったテーマで観ていただけたらなと思います。
もちろん最初からのテーマを忘れているわけではなく、
この作品に登場する曲を集めたアルバム制作などを通じても
日本ALS協会へのサポートは続けます。」
小原さんオリジナルの音楽について
「本を読んでそれを素直に音楽にしました。
ただ、ストーリー自体が重厚ですから、それを重く
伝えてしまうと作品としての後味が深くなり過ぎる可能性があります。
ですから、音楽で和らげるというか、なるべくメロディを美しくしました。
心にすっと入っていって、皆さんの中でそれを膨らませていただくように
編成もシンプルに、メロディラインも
一度聞いたら忘れられないようなものばかりです。
それを基調にして作りましたので、それがどう伝わるか楽しみですね。」
今回、新しいメンバーも加わっての再演となりましたが、
「吉原さんによって、これまで今さんがされてきたミッチとはまた違う、
新しいミッチの像が出てきています。
同じ作品でも演じる人が違うと新しいカラーとなり、色んな発見がありますね。
実は始めた頃から、公演を続けていきたい、
全国各地でやっていきたいと思っていました。
そのためには、色んな人が色んな役を演じることで作品が育って、
そして続けていかれるといいなと思っていますので、その第一歩ですね。
今回の兵庫公演も、東京以外では初めてですし!
更に、東京公演では終盤の「波の話」で子役も登場します。
新しい演出になり、暗すぎずにぽっと明るく未来に続くような、
モリー先生からのメッセージがさらに子どもたちに伝わるという
意味合いを持たせています!」
ちらしの言葉
「美しい音楽とことばで綴る、これは希望の物語。」
まさにそんな舞台にするべく、丁寧な作品作りがされているお稽古場でした!
一度観たら、リピートしたくなる、
そしてお友達にお勧めしたくなる音楽朗読劇です♪
ハンカチお忘れ無く!
<耳より情報>
『モリー先生との火曜日』の曲も収録された
「小原孝オリジナル全曲集2~星になって~」
が昨年秋に発売されました!東京公演の会場で限定販売されます!
とーっても素敵なCDです
(ヴァイオリンの真部裕さんもヴァイオリン・ヴィオラで参加されてます♪)
<公演情報>
原作:ミッチ・アルボム
脚本・訳詞:高橋知伽江
演出:山崎義也
2012年1月29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2012年2月18日(土) ティアラこうとう
おけぴ取材班&撮影:chiaki 監修:おけぴ管理人