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「星の王子ニューヨークへ行く」 ~忘れ難きあの笑顔~
ジョン・ランディス監督

星の王子ニューヨークへ行く」(1988

監督: ジョン・ランディス
製作: マーク・リップスキー/レスリー・バルツバーク
製作総指揮: ジョージ・フォルシー・Jr
原案: エディ・マーフィ
脚本: デヴィッド・シェフィールド/バリー・W・ブラウスタイン
撮影: ウディ・オーメンズ
特殊メイク: リック・ベイカー
編集: ジョージ・フォルシー・Jr/マルコム・キャンベル
音楽: ナイル・ロジャース

出演:
エディ・マーフィ / アーキム王子
アーセニオ・ホール / セミ
シャーリー・ヘドリー / リサ・マクドウォール
ジェームズ・アール・ジョーンズ / ザムンダ国王
ジョン・エイモス / クレオ・マクドウォール
マッジ・シンクレア
ポール・ベイツ
アリソン・ディーン
エリック・ラ・サール
ルウイー・アンダーソン
カルヴィン・ロックハート
サミュエル・l・ジャクソン
キューバ・グッディング・JR
ヴァネッサ・ベル
フランキー・フェイソン
ドン・アメチー
ラルフ・ベラミー


【おはなし】

とあるアフリカの国の王子が、花嫁探しにニューヨークへやってきた。

【コメントー忘れ難きあの笑顔ー】

当時、エディ・マーフィの人気は大変なものだった。
ビバリーヒルズ・コップ84年)」と「48時間82年)」はシリーズ化されるヒット作。
テレビ放映も頻繁にあり、僕らにとっては初めて身近に感じた黒人俳優だった。

ポリスアカデミー84年)」の声帯模写をやる人と区別がつかなかったのは過去のこと。
「星の王子ニューヨークへ行く」は、エディ・マーフィ主演の、待ちに待った新作。
中学一年生(88年)だった僕は勇んで映画館へ出かけた。

一国のプリンス(あるいはプリンセス)が、下々の住む世界へ足を踏み入れるという設定は、物語の定番でもある。
王子と乞食77年)」「ローマの休日53年)」など名作も多い。
この作品も、安定した物語の進行で最後まで楽しく、気持ちのいい作品に仕上がっていた。

エディ・マーフィには、お喋りで陽気で軽い奴というイメージがあったので、大金持ちという役どころに最初違和感があった。
エディは、きっと少し偉くなったんだ!

コメディの質がこれまでと違った。
王子、エディ・マーフィの振る舞いが、世間とずれているところに笑いのポイントは置かれる。
道端で物乞いをしているホームレスに、札束をどさっと置いて行く場面がある。
あくまで平然とし、悠長な態度がおかしさを誘う。
今までにない彼の表情だった。

親の決めた結婚を拒否し、ニューヨークまで花嫁を探しに来た王子。
王子に仕える従者(アーセニオ・ホール)は、同じく身分を隠してエディを傍で見守る。
二人の関係は主従のそれではなく、仲の良い先輩後輩といった雰囲気である。
そして、むしろこの従者セミに本来のエディ的役割が与えられているような気がした。
エディ、本当に少し偉くなったんだな!

ニューヨークで出会った一人の女性に、王子はアタックする。
そこへ、父親である国王が許婚との結婚しか認めないつもりで乗り込んでくる。
うまく行きかけた二人の恋は、俄然雲行きがあやしくなってくる。
この辺りのラブロマンスのくだりも、なかなかどうして、エディ・マーフィ、堅実にやっている。
コメディアンの延長線上にいた今までの作品からすると、飛躍的に俳優としての安定感を見せている。
僕は、うれしく感じると同時に、ちょっぴり残念な気分にもなった。

ディテールをほじくったギャグも満載で大笑いし、大団円を迎えるラストシーンでは心弾み、映画はとてもおもしろかった。
そして、エディは少し偉くなった。
満足感と、一抹の寂寥感を胸に、僕は映画館を出た。
エディ、ありがとう。

僕の不安に反して、エディ・マーフィが偉くなったのは、しかし、これが最後だった。
多くのコメディアン出身俳優がシリアス路線に乗り換える中、彼は現在に至るまでその流れに乗ることはない。
あくまでバカバカしいコメディの線を踏もうとしている。
せっかく僕の不満に応えてくれたエディだったのに、何故か「星の王子~」以降は、彼の作品を見に行かなくなってしまった。
ごめん、エディ。

彼の最新出演作はCGアニメ「シュレック3」でのロバさん、ドンキー役である。
あっぱれ!



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●2007年07月09日 13:02に投稿された記事です。

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●次の投稿は「「十二人の怒れる男」 ~未成年ノットギルティ~シドニー・ルメット監督」です。

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