« 前の記事 | メインページ | 次の記事 »

「カリフォルニア・ドールス」~必殺技を持つ女たち~
ロバート・アルドリッチ監督

カリフォルニア・ドールス」(1981

監督: ロバート・アルドリッチ
製作: ウィリアム・アルドリッチ
脚本: メル・フローマン
撮影: ジョセフ・バイロック
音楽: フランク・デ・ヴォール

出演:
ピーター・フォーク
ヴィッキー・フレデリック
ローレン・ランドン
バート・ヤング
トレイシー・リード
リチャード・ジャッケル
ミミ萩原
ブリンク・スティーヴンス
クライド草津


【おはなし】

女子プロレスの全米巡業は過酷である。
それをタッグを組む二人の女子プロレスラーと、マネージャーであるピーター・フォーク刑事コロンボの人)のたった三人で、それも車移動でやってるのだから困難は尽きない。


【コメントー必殺技を持つ女たちー】

80年代半ば、女子プロレスのクラッシュギャルズの人気は大変なものだった。
ライオネル飛鳥長与千種のタッグチームで、レコードをリリースするなどプロレスの枠を超え活躍していた。
小学生だった僕(82年88年)も、よくテレビで観戦した。
クラッシュギャルズに対抗するはダンプ松本ブル中野極悪同盟
この二組の対戦はいつも姉と楽しみにしていた。
勢い余って姉は僕に技をかけては悦に入っていた。

僕にとって女子プロレスと言えばクラッシュギャルズ。
そして04年頃にビデオで借りて見た、このカリフォルニア・ドールズ(※)もまた、心に残る女子プロレスラーである。

華々しい女子プロレスのチャンピオンを目指して、カリフォルニア・ドールズは奮闘する。
マネージャーと三人で、ポンコツ車に乗って地方巡業を繰り返す。
日本人タッグチーム、ミミ萩原&ジャンボ堀との闘いの後、彼女らの必殺技、回転海老固め
をドールズも覚えるようにとマネージャーは命令する。
ピーター・フォーク演じるこのマネージャーは、血の気の多い男。
ドールズ二人を怒鳴りつけもするが、彼女たちを売るためには興業主に楯突いたりもする。
この人物が全編に渡って映画を引っ張る。
彼のおかげで出世もするが、彼のせいで何度も危機が訪れる。

ドールズの闘いっぷりはプロレスそのもの。
女優が演じているとは思えぬ迫力である。
セクシー且つ豪快。
サバサバしていて愛嬌のある二人。
マネージャーと激しい口論をしつつ、また同じ車に乗って移動する。
騙されてファイトマネーを貰えなかったり、いい試合が組めなかったりで、三人のどさ回りは苦難を極める。

奮闘もの映画のクライマックスによくあるのがライブのステージやスポーツの試合などで、ここで登場人物の抱えるドラマは凝縮され、それまでに培ってきたものが披露される。
観客は主人公の晴れ姿を固唾を飲んで見守る。
この映画でも、宿敵タイガーズとのベルトを賭けた一戦がクライマックスに用意されている。
そういう点では王道の筋ではあるが、しかし、並みの映画とは何かが違う。
この臨場感、リアリティ、気分の高揚は一体なんだろう。
まるで本当に観戦しているかのような心地にさせられた。

この感覚は何もクライマックスの闘いに限ったことではない。
どのシーンにもカラッと乾いた現実味が感じられるのだ。
奮闘もの映画は、ほとんどの場合「感動」の展開になる。
とうとうステージに立てた!という達成感や勝利の喜びに酔いしれるのがお決まりである。
得てして「感動」は、あざとさを伴い、見ていてお腹が一杯になる。

アルドリッチ監督は、そこをさらりと描く。
余計な情緒を映画に持たせない。
闘いは闘いとして描き、出来事は出来事として描く。

たとえば…。
ドールズは試合でレオタード姿である。
少しエッチだななどと思って見ていたら、映画中盤で泥んこプロレスをやっている。
まともな試合が組めなくて、ほとんど見世物の興行をやるはめになったのだ。
泥の中で闘うドールズは、おっぱい丸出しである。
おっぱい登場を殊更に大事として扱うことはない。
それはそれとして、シーンはどんどん進む。

もう一つ…。
マネージャーとレスラーの関係だとは言っても男女である。
三人だけでの長旅を続けていれば、それなりに恋心も芽生えたりするのだろうか・・・。
などと考えていると、次の場面ではマネージャーとドールズの一人がヤッてしまった翌朝である。
なにー!
前触れもほとんどない。
そうなることもあるさとばかりに、シーンはどんどん進む。

なぜだろう、無理にドラマチックな映画にしない突き放したような視点が、返って興奮を喚起する。
タイガーズとの試合を観戦していた僕は、クラッシュギャルズを応援していた時と同じ僕になっていた。
感動は用意されたものではなく、成行きによって自然に生まれてくる。
カリフォルニア・ドールズがタイガーズに回転海老固めを決めた時には、僕は期せずして拳を振り上げてしまった。

笑えて、興奮できて、ちょっとエロくもあって、感動が下手に湿っぽくなくて、スポーツ奮闘映画はこうあれ!という見本のような作品。
ただ、残念なことにDVD化されておりません(そんな作品ばかり取り上げてしまいすいません)。
是非ともお近くのビデオ屋さんにお訊ねしてみて下さい。

※ビデオパッケージの表記は「ドールス」なのですが、「ドールズ」とされている文面も少なくないため、両方ちゃんぽんでこの記事は書かせていただきました。


コメントを投稿

About

●2007年07月21日 16:52に投稿された記事です。

●ひとつ前の投稿は「「夏物語」 ~美人の投票箱~     エリック・ロメール監督」です。

●次の投稿は「「スティング」~自分で自分は騙せない~ジョージ・ロイ・ヒル監督」です。

メインページへ戻る。

最近書いたもの

このブログのフィードを取得
[フィードとは]