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「私を野球につれてって」~おまけ野球で楽しもう~
バスビー・バークレイ監督

私を野球につれてって」(1949年

監督: バスビー・バークレイ
製作: アーサー・フリード
脚本: ハリー・テュージェンド/ジョージ・ウェルズ
撮影: ジョージ・フォルシー
作詞: ロジャー・イーデンス
作曲: ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン

出演:
フランク・シナトラ
ジーン・ケリー
エスター・ウィリアムズ
ベティ・ギャレット
エドワード・アーノルド
ジュールス・マンシン
ブラックバーン・ツインズ
サリー・フォレスト


【おはなし】

大リーグ、ウルフズの新任球団社長は女性だった。
主要選手のジーン・ケリーは素人に任せられるかと息巻くが、彼女が美人だったので困惑。
野球の場面はほとんどなし。ラブコメディ・ミュージカル。


【コメントーおまけ野球で楽しもうー】

先日、友人と連れ立って野球観戦に行って来た。
西武ライオンズオリックスバッファローズ戦。
グッドウィルドームは、かつての西武球場。
西武線の駅名は未だに「西武球場前駅」のままなのが、昨今のプロ野球事情を窺わせる。
友人の一人が新座市民の割引でチケットを買ってくれていた。
内野自由席が1枚2000円。

球場では、一塁側か三塁側かに入場することになる。
西武側かオリックス側かの選択なのだが、特別どちらのファンでもない我々は、空いているであろうオリックスの三塁側のチケットを取っていた。
オリックスバッファローズは目下最下位争いに奮闘中。
案の定空席だらけだったので、客席に持参の食べ物を広げて陣取った。
手ぶらで行っても、球場にはケンタッキーやラーメン、そば、カツカレー、抹茶フロート、様々な店舗がずらりと並んでいるから、食べ物や飲み物には事欠かない。
僕は、冷やしラーメンなるものを買って食べた。
客席ではビールやサワーの売り子があちこちにいる。
このピクニック気分、お祭り気分にこそ球場観戦の楽しさがある。
おまけにうまい野球まで見れるのだから贅沢だ。

映画「私を野球につれてって」でも、野球はほんの設定に過ぎないおまけみたいなものだ。
映画冒頭からして、ジーン・ケリーフランク・シナトラが舞台で歌い踊っている。
大リーグ、ウルフズの主力メンバーでありながら、二人はオフシーズンの間、ショーの舞台に立っているのだ。
シーズン開幕直前に帰って来た二人をチームメイトは歓迎する。
そこへ、苦々しい顔をしてやって来た監督が球団オーナーが替ってしまったことを告げる。

そういったストーリーは、この映画ではそれほど重要ではない。
全編に渡って楽しい歌とダンスが披露され、特にジーン・ケリーのタップダンスをたっぷりと堪能できる。
ミュージカル界のマーロン・ブランドとは本人の弁らしいが、ダイナミックな踊りは大変魅力的だ。

一方、若きフランク・シナトラは、映画の中で瘠せ過ぎをネタにされるほどにほっそりとしている。
兄貴分のジーン・ケリーから頭をはたかれたりもする、純朴で可愛らしい役どころだ。
後年、イタリアンマフィアとの黒い関係が噂された俳優歌手だが、ここではその面影は全くない。

新任の球団オーナーはエスター・ウィリアムズ演じる若い美人女性だった。
この女優さんは元々競泳の選手で、この映画でも特に意味もなくプールで泳ぎながら唄う場面が挿入される。
美人オーナーにゾッコンのシナトラであったが、オーナーはなんだかジーン・ケリーとどうにかなりそうな気配。
恋の三角関係も至極あっさりと描かれる。
この映画に「葛藤」など無用。
楽しいアメリカの、楽しい国技にまつわる、軽いタッチのミュージカルコメディである。
気軽に見て、笑顔で映画館を出るような作品。

そう言えば、先日の野球観戦でも、思わず笑顔になる場面を目撃した。
三列前に座っていた、高校生くらいの男の子が売り子を呼んだ。
こちらも十代だろうか、売り子の女の子が彼の隣りの階段に腰掛け、背中のタンクからビールを注ぎ始めた。
野球部であろう、日焼けした坊主頭の彼は、しきりに彼女に話しかけている。
二人が会話をするのは、ビールが注ぎ終わるまでの間だけなのだろう。
満々とビールの入った紙コップを受け取った彼は、おもむろに鞄から小箱を取り出した。
小箱は包装されており、リボンも付いている。
プレゼントの体裁をしたその小箱は、女の子に手渡された。

試合は両投手の好投で、7回まで両チーム無得点の展開。
息詰まる投手戦をよそに、売り子の彼女が去ったあと、彼はしばらく天井を見上げていた。
よく見ると彼の周辺には二杯のビールが手付かずのまま置かれていた。
三杯目にしてようやくプレゼントを渡せたということだろうか。
どちらが勝つかまだ決着のつかないうちに、彼は三杯のビールをちゃんと片付けて、球場を去って行った。
今日の試合は、彼の中ではゲームセットだったわけだ。
また次の試合で、もしかしたら勝利をあげられるかもしれない。

素晴らしき、球場の恋。
西武ライオンズ西口投手の150勝達成が決まり、花火が上がった。
屋根付き球場なので、花火の煙が雲のように天井付近に充満したのがおかしかった。
おまけにプロ選手の野球まで見ることができた。
また、球場に足を運ぼうと思う。
TAKE ME OUT TO THE BALL GAME!


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About

●2007年08月19日 21:14に投稿された記事です。

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