« 前の記事 | メインページ | 次の記事 »

「シカゴ」 ~二つの腹話術~      
ロブ・マーシャル監督

シカゴ」(2002年

監督: ロブ・マーシャル
製作: マーティ・リチャーズ
共同製作: ドン・カーモディ
製作総指揮: ニール・メロン/クレイグ・ゼイダン/ジェニファー・バーマン/サム・クロザーズ/メリル・ポスター/ボブ・ワインスタイン/ハーヴェイ・ワインスタイン
共同製作総指揮: ジュリー・ゴールドスタイン
原作: ボブ・フォッシーミュージカル『シカゴ』)/フレッド・エッブ (ミュージカル『シカゴ』)
原作戯曲: モーリン・ダラス・ワトキンス
脚本: ビル・コンドン
撮影: ディオン・ビーブ
美術: ジョン・マイヤー
衣装: コリーン・アトウッド
編集: マーティン・ウォルシュ
音楽: ジョン・カンダー (ミュージカル『シカゴ』)/ダニー・エルフマン

出演:
レニー・ゼルウィガー / ロキシー・ハート
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ / ヴェルマ・ケリー
リチャード・ギア / ビリー・フリン
クイーン・ラティファ / ママ・モートン
ジョン・C・ライリー / エイモス・ハート
テイ・ディグス / バンドリーダー
ルーシー・リュー / キティー
クリスティーン・バランスキー / メアリー・サンシャイン
コルム・フィオール / マーティン・ハリソン
ドミニク・ウェスト / フレッド・ケイスリー


【おはなし】

血だらけの手を洗うヴェルマ!真っ赤に染まる洗面台!
あとは、歌と踊りを楽しみましょう。


【コメントー二つの腹話術ー】

03年、僕は演劇の公演を控え戦々恐々としていた。
学生時代(95年97年)以来、久々のお芝居参加だった。
劇団というほどのものではない。
数人が集まってほとんど成り行きで立ち上げたのだが、二度公演を打っただけでその後自然消滅してしまった。

僕たちは公演ができるかどうかの瀬戸際に立たされていた。
台本は難航を極め、稽古はまるで進行せず、事態は日を追うごとに悪化していった。
自分たちの不甲斐なさに呆れ、またやり場のない怒りに苦悶した。
今思えば、誰も期待などしていないお芝居に、何故あんなにも苦痛を持ち込まなければならなかったのか理解に苦しむ。
本番まで二週間を切った段階で我々は腹をくくった。
とにかく時間を埋めろ。
短編のお芝居を三つ。その幕間に映像作品を二つ。
なんとか捻り出せ!
オムニバス形式という有難い呼び名がある。短いものならボロが出なくて済む。
本当を言うと短くてもボロは出るものなんだが。

四つはなんとかなったのだが、最後の一つがどうしても完成しない。
公演日まであと五日というとき、腹話術の短編芝居がようやく生まれた。

ミュージカル映画「シカゴ」は、楽しい作品だった。
公開後DVDで鑑賞したが、スクリーンで見なかったことを後悔した。

ミュージカル専門ではない俳優がミュージカル映画に出演することは多々あるが、これはおそらく映画の場合編集段階で、ある程度ゴマカシが効くからだろう。
スタントマン同様に、顔を見せなければダンスのプロに演じさせることもできるし、俳優のうまく格好がついた姿だけを抜粋して繋げることもできる。歌は録音したものをいくらでも修正可能だ。
これは映画ミュージカルの利点であり、醍醐味でもあると思う。
ただしフレッド・アステア のような人がいるのならば(※)、僕はそちらを見たいとは思うのだが。

リチャード・ギアは頑張っていた。
もう結構いい歳だ。
抜群にうまく踊れるわけではない俳優は表情が重要になってくる。
雰囲気である。
問題なくやりきったぜ!という顔をしてくれると、それなりに見えたりする。
リチャード・ギアレニー・ゼルウィガーは、そういう点ではしっかりと演じて見せていた。

良かったのはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ
迫力のある存在感で、他の二人を完全に食ってしまっていた。
結構やる人なんだなと、この映画で知った。
伊達でマイケル・ダグラスと結婚したわけじゃない。
相当なタマだ。格好いい。

虚構と現実が交錯し、ショーなのか現実なのか判然としない場面が、このミュージカルのおもしろいところで、最終的に犯罪も何もショーにしちまえという発想は好きだ。

そして印象的なのは腹話術の場面。
これのことか。

参加したお芝居は、内容はともかく無事終了した。
終演後、お客さんの一人から指摘された。
「人間腹話術は、シカゴでしょ?」
僕は「シカゴ」を見ていなかったので面食らってしまった。

椅子にかけたリチャード・ギアの膝に乗るレニー・ゼルウィガーは人形のメイク。
二人は腹話術芸の掛け合いをやる。
まったく同じアイデアだ。
しかも、ハリウッド俳優はうまいこと演じる。
実に楽しい場面だ。
我々のやった腹話術芝居のなんと下品だったことだろう。
赤面ものである。

売れない芸人ナカさんとケン坊の下ネタ満載の会話。
客席から温かい失笑をたくさん頂戴した。
その腹話術を演じた友人夫婦は、懲りることなく、その後呼ばれた友達の結婚式の余興でそいつを披露したのだそうだ。
「まあまあウケたよ」とケロッとしている彼らは、まだ「シカゴ」を見ていないかもしれない。

※フレッド・アステアついて「イースター・パレード」の記事で触れています→こちら(07年9月4日の記事です)


コメントを投稿

最近書いたもの

このブログのフィードを取得
[フィードとは]